住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2018年版】
【坪単価で把握する住宅の建築費|2018年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握する「坪単価で把握する建築費特集」、今回は建物用途が住宅の場合として、2017年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきたいと思います。
構造別でみた住宅の坪単価は木造で約55.3万円/坪の水準に!
まず、全国における住宅の建築費を構造別でみてみると、坪単価が最も高い水準となったのは鉄骨鉄筋コンクリート造の場合で82.7(万円/坪)でした。次いで鉄筋コンクリート造、鉄骨造がそれぞれ80.6(万円/坪)、75.1(万円/坪)の水準になりました。一方、木造の場合は、坪単価が55.3(万円/坪)とここで取り上げた4種類の構造において最も低い水準となっています。(下図1参照)
また、図1において、全構造平均の坪単価は62.9(万円/坪)と木造と鉄骨造の水準の間に位置していますが、これは、国内における住宅建築の約66%が木造として建設されていることに影響を受けている為と考えられます。(下図2参照)
都道府県別でみた住宅の坪単価は!?
①木造住宅の建築費は沖縄、長野が最も高い水準に!
木造住宅の建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準となったのは沖縄と長野で60.5(万円/坪)でした。そして、岡山、三重、山梨がそれぞれ60.0(万円/坪)、59.2(万円/坪)、58.4(万円/坪)と続きました。また、東京都における坪単価の水準は58.2(万円/坪)と山梨に次いで6番目でした。(下図3参照)
一方、坪単価が最も低い水準であったのは宮崎の48.7(万円/坪)で、次いで徳島の51.8(万円/坪)となっています。木造住宅の建築費水準は都道府県別に見た場合、概ね50.0(万円/坪)から60.0(万円/坪)の間に収まっていることも特徴として挙げられます。
②鉄筋コンクリート造住宅の坪単価は東京都が顕著に高い水準に!
鉄筋コンクリート造住宅における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準は東京都の106.7(万円/坪)で、これは東京都以外における坪単価が90.0(万円/坪)以下であることを踏まえると顕著に高い水準にあることが分かります。一方、坪単価が最も低い水準となったのは愛媛の54.0(万円/坪)で、次いで佐賀の54.8(万円/坪)、熊本、香川の57.3(万円/坪)となっています。このように、木造住宅の場合と比較して、建築費の水準が都道府県の間で格差があることが分かります。(下図4参照)
③鉄骨造住宅の建築費は東京都、神奈川、静岡で高水準に!
鉄骨造住宅の建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準は東京都の92.5(万円/坪)で、神奈川の83.1(万円/坪)、静岡の77.4(万円/坪)、埼玉の76.7(万円/坪)がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準は山形の54.3(万円/坪)で、次いで新潟の56.6(万円/坪)、宮崎の57.8(万円/坪)となっています。(下図5参照)
東京都や全国における住宅建築費の傾向は!?
①木造住宅の場合における建築費の傾向は?
2011年から2017年までの東京都における木造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2012年の57.2(万円/坪)から若干の上昇傾向にあります。しかしながら、2011年から2017年まで大きく変動することなく推移しています。(下図6参照)
一方、全国における木造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の52.2(万円/坪)から2017年の55.3(万円/坪)まで、右肩上がりで推移し、この間に建築費は約6%上昇しています。(下図7参照)
②鉄筋コンクリート造住宅の場合における建築費の傾向は?
続いて、2011年から2017年までの東京都における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2011年の71.6(万円/坪)から2017年の106.7(万円/坪)へ大きく上昇していることが分かります。(下図8参照)
一方、全国における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、2012年の59.7(万円/坪)から2017年の80.6(万円/坪)へ約35%と大きく上昇していることが分かります。(下図9参照)
③鉄骨造住宅の場合における建築費の傾向は?
木造住宅や鉄筋コンクリート造住宅と同様に、東京都における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の76.6(万円/坪)を底として、2017年の92.5(万円/坪)へ約21%上昇していることが読み取れます。(下図10参照)
また、全国における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、東京都の場合と同様に2011年を底として2017年の75.1(万円/坪)まで継続的に上昇し、この間に約15%上昇していることが分かります。(下図11参照)
このように、住宅の場合における建築費の傾向は、木造では大きく変動していない一方、鉄筋コンクリート造の場合では変動が大きいことが分かります。また、2017年までの変動幅について、東京都と全国の場合で比較してみると、東京都における建築費の変動幅が顕著であることも分かりました。
以上のように、今回は「坪単価で把握する建築費」シリーズの1回目として、建物用途が住宅の場合における建築費の水準について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や都市別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む方法としては適している一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
注)坪単価を算出する際に対象としたデータについて、建物数が10棟未満の場合については、ばらつきを考慮して対象から抜いている。
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