住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2024年版】
【坪単価で把握する住宅の建築費2024年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握する「坪単価で把握する建築費特集」、今回は建物用途が住宅の場合として、2023年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきたいと思います。
構造別でみた住宅の坪単価は木造で坪あたり66.0万円の水準に
まず、2023年の全国における住宅の建築費を構造別でみてみると、坪単価が最も高い水準となったのは鉄骨鉄筋コンクリート造の場合で98.6(万円/坪)でした。次いで鉄筋コンクリート造、鉄骨造がそれぞれ97.1(万円/坪)、95.1(万円/坪)の水準になりました。一方、木造の場合は、坪単価が66.0(万円/坪)と、ここで取り上げた4種類の構造において最も低い水準となっています。(下図参照)
また、上図において、全構造平均の坪単価は75.7(万円/坪)と木造と鉄骨造の水準の間に位置していますが、これは、国内における住宅建築の約66%が木造として建設されていることに影響を受けている為と考えられます。(下図参照)
都道府県別でみた住宅の坪単価は?
①木造住宅の建築費が最も高い水準は長野に、続いて北海道、島根、山梨が高水準に
木造住宅の建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準となったのは長野で80.7(万円/坪)でした。そして、北海道、島根、山梨がそれぞれ75.4(万円/坪)、74.1(万円/坪)、73.3(万円/坪)と続いています。また、東京における坪単価の水準は68.6(万円/坪)でした。(下図参照)
一方、木造住宅で坪単価が最も低い水準であったのは大阪の59.2(万円/坪)、次いで埼玉の59.7(万円/坪)、京都の61.5(万円/坪)、沖縄の61.7(万円/坪)となっています。
②鉄筋コンクリート造住宅の坪単価は東京が最も高い水準に
2023年の鉄筋コンクリート造住宅における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準は東京の121.4(万円/坪)、次いで長野、山梨、神奈川、埼玉がそれぞれ120.5(万円/坪)、113.1(万円/坪)、105.0(万円/坪)、101.6(万円/坪)の水準となっています。東京、長野と山梨を除く地域における坪単価が90.0(万円/坪)未満であることを踏まえると、これら3地域における水準が突出して高いことが分かります。
一方、坪単価が最も低い水準となったのは和歌山の60.5(万円/坪)で、山口の69.8(万円/坪)、滋賀の69.9(万円/坪)、北海道の70.5(万円/坪)が続いています。このように、鉄筋コンクリート造の場合における住宅の建築費水準は、木造の場合と異なり、都道府県の間で乖離が大きいことが読み取れます。(下図参照)
③鉄骨造住宅の建築費は東京が最も高水準に
2023年の鉄骨造住宅における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の114.5(万円/坪)で、神奈川の105.3(万円/坪)、京都の102.7(万円/坪)、石川の101.5(万円/坪)がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは山形の57.6(万円/坪)、次いで鹿児島の68.6(万円/坪)、岩手の73.1(万円/坪)、徳島の74.3(万円/坪)となっています。(下図参照)
東京や全国における住宅建築費の傾向は?
①木造住宅の建築費は東京、全国で上昇へ
2011年から2023年までの東京における木造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2013年の57.2(万円/坪)から2019年の58.5(万円/坪)まで上昇傾向にあります。その後、2021年の57.2(万円/坪)まで2年連続で下落していましたが、2022年は57.3(万円/坪)と上昇に転じ、2023年は68.6(万円/坪)と大幅に上昇しています。東京における木造住宅の建築費水準は、2011年から2022年まで大きく変動することなく、概ね坪あたり57万円から58万円前後の水準で推移していましたが、2023年に大きく上昇したことが読み取れます(下図参照)
一方、全国における木造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の52.2(万円/坪)から2022年の58.0(万円/坪)まで年々右肩上がりで推移しており、この11年間に建築費は坪あたりでは約5.8万円高い水準へ、上昇率でみると約11.0%上昇しています。そして、2023年における建築費の水準は66.0(万円/坪)と、東京の場合と同様に、前年比で約13.8%と大きく上昇しました。(下図参照)
②鉄筋コンクリート造住宅の建築費は東京と全国で上昇に
次に、2011年から2023年までの東京における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2011年の71.6(万円/坪)から2017年の106.7(万円/坪)へ約49%と大きく上昇しました。その後、2018年に102.4(万円/坪)の水準へ若干下落したものの、2020年の107.3(万円/坪)まで2年連続で上昇しています。そこから2021年の107.0(万円/坪)まで再び下落しましたが、2022年は110.4(万円/坪)と上昇に転じ、2023年は121.4(万円/坪)まで上昇していることが分かります。(下図参照)
続いて、全国における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、2012年の59.7(万円/坪)から2017年の80.6(万円/坪)まで約35%と大きく上昇しています。その後、2018年に80.2(万円/坪)と僅かに下落したものの、2023年の97.1(万円/坪)まで5年連続で上昇していることが読み取れます。(下図参照)
③鉄骨造住宅の建築費は東京と全国で共に上昇傾向が継続
木造住宅や鉄筋コンクリート造住宅と同様に、東京における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の76.6(万円/坪)から右肩上がりの上昇傾向で推移し、2023年の時点で114.5(万円/坪)と12年間で約49.5%上昇していることが分かります。(下図参照)
また、全国における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、東京の場合と同様に2011年の65.1(万円/坪)を底として2023年の95.1(万円/坪)まで継続的に上昇し、この12年間で約46.0%上昇していることが分かります。(下図参照)
このように、住宅における建築費水準の傾向は、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の場合では変動が大きく、木造においても2023年は大きく変動したことが読み取れます。
以上のように、今回は「坪単価で把握する建築費」シリーズとして、建物用途が住宅の場合における建築費の水準について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や都市別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む方法としては適している一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
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参考|主要データ一覧
住宅の建築費水準|木造
都道府県 | 坪単価 |
---|---|
長野県 | 80.7(万円/坪) |
北海道 | 75.4(万円/坪) |
島根県 | 74.1(万円/坪) |
山梨県 | 73.3(万円/坪) |
新潟県 | 72.3(万円/坪) |
高知県 | 72.3(万円/坪) |
三重県 | 72.0(万円/坪) |
石川県 | 71.7(万円/坪) |
富山県 | 71.7(万円/坪) |
岩手県 | 71.6(万円/坪) |
鳥取県 | 71.6(万円/坪) |
山形県 | 71.1(万円/坪) |
岡山県 | 71.1(万円/坪) |
山口県 | 70.2(万円/坪) |
香川県 | 70.1(万円/坪) |
徳島県 | 70.1(万円/坪) |
福井県 | 69.3(万円/坪) |
静岡県 | 68.8(万円/坪) |
東京都 | 68.6(万円/坪) |
福島県 | 68.4(万円/坪) |
岐阜県 | 68.0(万円/坪) |
愛媛県 | 67.7(万円/坪) |
青森県 | 67.6(万円/坪) |
鹿児島県 | 66.7(万円/坪) |
栃木県 | 66.5(万円/坪) |
大分県 | 66.5(万円/坪) |
熊本県 | 66.1(万円/坪) |
長崎県 | 66.1(万円/坪) |
秋田県 | 66.0(万円/坪) |
広島県 | 65.0(万円/坪) |
愛知県 | 64.7(万円/坪) |
兵庫県 | 64.6(万円/坪) |
滋賀県 | 64.5(万円/坪) |
群馬県 | 64.5(万円/坪) |
茨城県 | 64.5(万円/坪) |
和歌山県 | 64.0(万円/坪) |
神奈川県 | 63.9(万円/坪) |
宮崎県 | 63.8(万円/坪) |
奈良県 | 63.7(万円/坪) |
宮城県 | 63.4(万円/坪) |
千葉県 | 63.2(万円/坪) |
佐賀県 | 62.7(万円/坪) |
福岡県 | 62.5(万円/坪) |
沖縄県 | 61.7(万円/坪) |
京都府 | 61.5(万円/坪) |
埼玉県 | 59.7(万円/坪) |
大阪府 | 59.2(万円/坪) |
全国平均 | 66.0(万円/坪) |
出典|建築着工統計調査(国交省)に基づいて作成(2023年時点)
※建築費(万円/坪)は工事費予定額(円)を床面積(坪)で除した値で消費税は含まない
注)坪単価を算出する際に対象としたデータについて、建物数が10棟未満の場合は、ばらつきを考慮して対象外とした。
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・住宅価格の相場は購入価格や坪単価でどの程度の水準か?
・東京の住宅価格はどの程度の水準か?
・神奈川の住宅価格はどの程度の水準か?
・千葉の住宅価格はどの程度の水準か?
・埼玉の住宅価格はどの程度の水準か?
・大阪の住宅価格はどの程度の水準か?
・福岡の住宅価格はどの程度の水準か?
・北海道の住宅価格はどの程度の水準か?
・沖縄の住宅価格はどの程度の水準か?
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・賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
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