賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2018年版】
【坪単価で把握する賃貸アパートの建築費|2018年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握するコラム「坪単価で把握する建築費」シリーズ、今回は賃貸アパートの場合として、国内における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介していきます。
一般に、賃貸アパートの建築費は建物の構造や地域によって異なるので、下記のように大きくは構造別の視点から都道府県別の建築費水準や近年の傾向について把握していきます。
- 1. 構造別にみた賃貸アパートの建築費水準
- 2. 賃貸アパート(木造)の建築費水準(都道府県別)
- 3. 賃貸アパート(木造)における建築費の傾向
- 4. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準(都道府県別)
- 5. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の傾向
1. 構造別でみた賃貸アパートの建築費水準は?
木造では約55万円/坪、プレハブ鉄骨造では約74万円/坪の水準に!
まず、全国における賃貸アパートの建築費を構造別でみてみると、鉄骨造(プレハブ工法)の場合で73.9(万円/坪)となっています。一方、構造が木造の賃貸アパートにおける建築費は55.2(万円/坪)の水準と、構造が鉄骨造(プレハブ工法)の場合と比較して坪あたりで約18.7万円程度低い水準となっています。(下図参照)
2. 賃貸アパート(木造)の建築費水準は?
都道府県別でみた賃貸アパート(木造)の坪単価、最も高い水準は福島、次いで奈良、栃木、東京が高水準に!
2017年の賃貸アパート(木造)における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは福島の74.9(万円/坪)で、奈良の66.8(万円/坪)、栃木の65.9(万円/坪)、東京の65.3(万円/坪)がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは鹿児島の40.8(万円/坪)で、宮崎の41.8(万円/坪)、北海道の43.1(万円/坪)と続いています。(下図参照)
賃貸アパート(木造)の特徴としては、福島における建築費の水準が他の地域と比較して突出して高い水準にある点、また福島以外の地域について地域差が大きい点が挙げられます。
3. 賃貸アパート(木造)における建築費の傾向は?
①全国における坪単価の水準は上昇傾向で直近5年間に約9.9%上昇!
2011年から2017年までの全国における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、2011年の50.4(万円/坪)から2012年の50.2(万円/坪)まで概ね横ばいで推移した後、2017年まで上昇傾向で推移していることが分かります。そして2017年の時点では55.2(万円/坪)の水準と、2012年からの5年間で約9.9%上昇しています。(下図参照)
②東京における坪単価の水準は直近3年間で約2.8%程度の上昇に!
続いて、東京における賃貸アパート(木造)の建築費の傾向を見てみると、2011年の64.5(万円/坪)より若干の上昇下落を繰り返すものの2017年の時点では65.3(万円/坪)となっております。建築費の水準は2013年の63.5(万円/坪)から3年続けて上昇傾向で推移し、直近の3年間では約2.8%程度上昇しております。(下図参照)
③神奈川における坪単価の水準は6年間で約10.4%上昇に!
神奈川における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、2011年の56.4(万円/坪)から2015年の61.7(万円/坪)まで継続した上昇傾向で推移しています。その後2016年まで概ね横ばいで推移したものの、2017年に再び上昇し、62.3(万円/坪)の水準となっていることが読み取れます。また2011年から2017年までの建築費上昇率は約10.4%と直近の6年間で1割以上高い水準となっていることが分かります。(下図参照)
④大阪における坪単価の水準は直近2年間では下落傾向で推移!
大阪における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、底である2011年の48.9(万円/坪)から2015年の51.9(万円/坪)までは上昇傾向で推移したものの、その後は2017年まで継続的に下落傾向で推移していることが読み取れます。建築費の水準は2015年から2017年まで4.1%程度下落しており、2017年の時点では49.8(万円/坪)の水準となっています。(下図参照)
4. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準は?
都道府県別でみた賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の坪単価、最も高い水準は東京、次いで福島、石川、和歌山が高水準に!
2017年の賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の90.4(万円/坪)で、福島の81.2(万円/坪)、さらには石川の79.7(万円/坪)、和歌山の77.9(万円/坪)、神奈川の77.7(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは宮崎の54.4(万円/坪)で、鹿児島の55.8(万円/坪)、徳島の61.2(万円/坪)と続いています。(下図参照)
賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の特徴としては、東京における建築費の水準が他の地域と比較して突出して高い水準にある点、また木造賃貸アパートの場合と同様に東京以外の地域において建築費の地域差が大きい点が挙げられます。
5. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の傾向は?
①全国における坪単価の水準はこの6年間で約2割上昇!
2011年から2017年まで全国における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の62.2(万円/坪)から2017年まで継続的な上昇傾向にあることが分かります。2017年の時点では73.9(万円/坪)と、2011年から6年間で約18.8%と大きく上昇していることが読み取れます。(下図参照)
②東京における坪単価の水準は2011年より約16%と大きく上昇!
東京における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の77.6(万円/坪)より2017年の90.4(万円/坪)まで継続的に上昇傾向で推移していることが分かります。全国でみた場合と同様に、建築費の水準はこの6年間で大きく上昇し、2011年からの上昇率は約16.4%となっています。(下図参照)
③愛知における坪単価の水準は直近6年間で2割以上高い水準に!
2011年から2017年までの愛知における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の56.9(万円/坪)から2013年の65.5(万円/坪)まで大きく上昇した後、2014年の61.2(万円/坪)まで下落しています。その後2015年まで再び上昇し、2016年は横ばいで推移しましたが2017年に再度上昇していることが分かります。2017年の時点における建築費の水準は69.4(万円/坪)で2011年から6年間で約21.8%と東京や全国の場合よりも高い上昇率となっています。(下図参照)
④大阪における坪単価の水準は2011年より約13.4%の上昇も横ばい傾向で推移!
大阪における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の61.1(万円/坪)より2015年の67.3(万円/坪)まで継続的に上昇して推移していることが読み取れます。その後、2016年に65.6(万円/坪)の水準まで下落しますが、2017年に再び上昇しています。2011年から2017年まで6年間の上昇率は13.4%と東京や愛知の場合まではいかないものの、大きく上昇していることが分かります。(下図参照)
以上のように、今回は建物用途が賃貸アパートの場合における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や地域別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む目的には適っている一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
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