賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2021年版】
【坪単価で把握する賃貸アパートの建築費|2021年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握するコラム「坪単価で把握する建築費」シリーズ、今回は賃貸アパートの場合として、2020年の国内における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介していきます。
一般に、賃貸アパートの建築費は建物の構造や地域によって異なるので、下記のように大きくは構造別の視点から都道府県別の建築費水準や近年の傾向について把握していきます。
- 1. 構造別でみた賃貸アパートの建築費水準
- 2. 賃貸アパート(木造)の建築費水準(都道府県別)
- 3. 賃貸アパート(木造)における建築費の傾向
- 4. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準(都道府県別)
- 5. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の傾向
1. 構造別でみた賃貸アパートの建築費水準は?
木造では約56万円/坪、プレハブ鉄骨造では約81万円/坪の水準に!
まず、2020年の全国における賃貸アパートの建築費を構造別でみてみると、鉄骨造(プレハブ工法)の場合で80.9(万円/坪)となっています。一方、構造が木造の賃貸アパートにおける建築費は56.0(万円/坪)の水準と、構造が鉄骨造(プレハブ工法)の場合と比較して坪あたりで約25万円程度低い水準となっています。(下図参照)
2. 賃貸アパート(木造)の建築費水準は?
都道府県別でみた賃貸アパート(木造)の坪単価、最も高い水準は高知、次いで沖縄、山梨、鳥取が高水準に!
賃貸アパート(木造)の2020年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは高知の105.7(万円/坪)で、沖縄の80.3(万円/坪)、山梨の74.1(万円/坪)、鳥取の67.5(万円/坪)がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは大分の35.7(万円/坪)で、宮崎の41.5(万円/坪)、岐阜の46.0(万円/坪)と続いています。(下図参照)
賃貸アパート(木造)の特徴としては、高知、沖縄、山梨における建築費の水準が他の地域と比較して突出して高い水準にある点、また各地域における建築費の水準に地域格差が大きい点が挙げられます。
3. 賃貸アパート(木造)における建築費の傾向は?
①全国における坪単価の水準は直近8年間で約11%上昇へ!
2011年から2020年までの全国における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、2011年の50.4(万円/坪)から2012年の50.2(万円/坪)まで概ね横ばいで推移した後、2020年まで継続的な上昇傾向で推移していることが分かります。そして2020年の時点では56.0(万円/坪)の水準と、2012年からの8年間で約11%上昇しています。(下図参照)
②東京における坪単価の水準は概ね横ばいもやや上昇に!
続いて、東京における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、2011年の64.5(万円/坪)より若干の上昇下落を繰り返し、2020年の時点では65.8(万円/坪)となっております。建築費の水準は2015年の63.5(万円/坪)から2018年の65.9(万円/坪)まで3年連続で上昇した後、2019年は65.6(万円/坪)と概ね横ばいながら下落、2020年は65.8(万円/坪)と概ね横ばいも僅かに上昇していることが読み取れます。(下図参照)
③大阪における坪単価の水準は若干の上昇傾向が継続!
大阪における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、底である2011年の48.9(万円/坪)から2015年の51.9(万円/坪)までは上昇傾向で推移しました。その後、2017年の49.8(万円/坪)まで下落傾向で推移しましたが、2018年に上昇へ転じ、2020年の時点では52.8(万円/坪)と、2017年から3年連続の上昇傾向で推移していることが分かります。(下図参照)
4. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準は?
都道府県別でみた賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の坪単価、最も高い水準は沖縄、次いで東京、神奈川、石川が高水準に!
賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の2020年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは沖縄の127.0(万円/坪)で、東京の99.0(万円/坪)、さらには神奈川の86.7(万円/坪)、石川の85.3(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは徳島の60.3(万円/坪)で、宮崎の61.7(万円/坪)、愛媛の62.7(万円/坪)と続いています。(下図参照)
賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の特徴としては、沖縄と東京おける建築費の水準が他の地域と比較して顕著に高い水準にある点、また木造賃貸アパートの場合と同様に各地域にお
ける建築費の地域格差が大きい点が挙げられます。
5. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の傾向は?
①全国における坪単価の水準はこの9年間で約30%上昇へ!
2011年から2020年まで全国における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の62.2(万円/坪)から2020年まで継続的な上昇傾向にあることが分かります。2020年の時点では80.9(万円/坪)と、2011年から9年間で約30.0%と大きく上昇していることが読み取れます。(下図参照)
②東京における坪単価の水準は2011年より27%以上と大きく上昇!
東京における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の77.6(万円/坪)より2020年の99.0(万円/坪)まで上昇傾向で推移していることが分かります。全国でみた場合と同様に、建築費の水準はこの9年間で大きく上昇し、2011年からの上昇率は約27.5%となっています。(下図参照)
③大阪における坪単価の水準は上昇へ転換に!
大阪における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の61.1(万円/坪)から2015年の67.3(万円/坪)まで上昇傾向で推移していましたが、2016年に65.6(万円/坪)まで下落しています。そして、2018年の71.9(万円/坪)まで上昇傾向で推移した後、2019年の時点では71.2(万円/坪)と下落に転じたものの、2020年は73.8(万円/坪)と再び上昇していることが読み取れます。なお、2011年から2020年まで9年間の上昇率は20.9%と全国や東京の場合まで上昇していないものの、大きく上昇していることが分かります。(下図参照)
以上のように、今回は建物用途が賃貸アパートの場合における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や地域別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む目的には適っている一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
◇実務で役立つ建築費の相場【最新版】TOPへ
◇実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】TOPへ
◇業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】TOPへ
◇職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】TOPへ
◇購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】TOPへ
◇過去データを見る|実務で役立つ建築費の相場【過去データ】TOPへ
参考|主要データ一覧
賃貸アパートの建築費水準
都道府県 | 坪単価 (木造) | 坪単価 (鉄骨造プレハブ工法) |
---|---|---|
高知県 | 105.7(万円/坪) | 73.4(万円/坪) |
沖縄県 | 80.3(万円/坪) | 127.0(万円/坪) |
山梨県 | 74.1(万円/坪) | 69.2(万円/坪) |
鳥取県 | 67.5(万円/坪) | 77.1(万円/坪) |
東京都 | 65.8(万円/坪) | 99.0(万円/坪) |
栃木県 | 65.1(万円/坪) | 66.0(万円/坪) |
三重県 | 63.3(万円/坪) | 77.3(万円/坪) |
京都府 | 62.0(万円/坪) | 79.7(万円/坪) |
静岡県 | 61.7(万円/坪) | 73.3(万円/坪) |
埼玉県 | 60.2(万円/坪) | 84.6(万円/坪) |
長野県 | 59.8(万円/坪) | 77.7(万円/坪) |
岩手県 | 59.1(万円/坪) | 63.0(万円/坪) |
福島県 | 58.3(万円/坪) | 74.2(万円/坪) |
秋田県 | 57.9(万円/坪) | 69.1(万円/坪) |
奈良県 | 57.8(万円/坪) | 73.7(万円/坪) |
島根県 | 57.3(万円/坪) | 72.9(万円/坪) |
千葉県 | 57.3(万円/坪) | 82.8(万円/坪) |
神奈川県 | 56.9(万円/坪) | 86.7(万円/坪) |
兵庫県 | 56.7(万円/坪) | 72.9(万円/坪) |
愛知県 | 56.0(万円/坪) | 74.1(万円/坪) |
宮城県 | 56.0(万円/坪) | 75.9(万円/坪) |
愛媛県 | 55.9(万円/坪) | 62.7(万円/坪) |
滋賀県 | 55.7(万円/坪) | 70.1(万円/坪) |
熊本県 | 55.5(万円/坪) | 69.7(万円/坪) |
山口県 | 54.9(万円/坪) | 72.9(万円/坪) |
新潟県 | 54.2(万円/坪) | 70.0(万円/坪) |
山形県 | 53.5(万円/坪) | 71.0(万円/坪) |
大阪府 | 52.8(万円/坪) | 73.8(万円/坪) |
和歌山県 | 52.8(万円/坪) | 74.5(万円/坪) |
長崎県 | 52.6(万円/坪) | 72.4(万円/坪) |
茨城県 | 52.4(万円/坪) | 71.5(万円/坪) |
石川県 | 51.9(万円/坪) | 85.3(万円/坪) |
岡山県 | 51.8(万円/坪) | 72.8(万円/坪) |
群馬県 | 51.6(万円/坪) | 71.9(万円/坪) |
青森県 | 50.4(万円/坪) | 78.7(万円/坪) |
福岡県 | 49.8(万円/坪) | 69.1(万円/坪) |
福井県 | 49.6(万円/坪) | 83.6(万円/坪) |
広島県 | 48.9(万円/坪) | 75.8(万円/坪) |
北海道 | 48.2(万円/坪) | 71.2(万円/坪) |
香川県 | 47.9(万円/坪) | 71.9(万円/坪) |
佐賀県 | 47.4(万円/坪) | 72.4(万円/坪) |
富山県 | 47.2(万円/坪) | 83.8(万円/坪) |
鹿児島県 | 46.3(万円/坪) | 73.6(万円/坪) |
岐阜県 | 46.0(万円/坪) | 75.3(万円/坪) |
宮崎県 | 41.5(万円/坪) | 61.7(万円/坪) |
大分県 | 35.7(万円/坪) | 66.6(万円/坪) |
徳島県 | - | 60.3(万円/坪) |
全国平均 | 56.0(万円/坪) | 80.9(万円/坪) |
※建築費(万円/坪)は工事費予定額(円)を床面積(坪)で除した値
注)坪単価を算出する際に対象としたデータについて、戸数が10戸未満の場合は、ばらつきを考慮して対象から抜いている。

「坪単価で把握する建築費」はこちらから↓
・戸建て住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・シェアハウスの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・マンションの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・事務所の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・工場の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・倉庫の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・商業店舗の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・病院の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・福祉介護施設の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
・学校の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-需要編」はこちらから↓
(1)主力とするターゲットや商品開発を建設需要から導こう!
(2)知りたい情報に辿り着ける3つのアプローチ!
(3)簡単に無料で手に入る「統計データ」を積極的に活用しよう!
(4)需要の傾向を読み解いて市場の先行きを考えよう!
(5)「影響要因」を把握して説得力のある需要予測を導き出そう!
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-供給編」はこちらから↓
(1)色々な視点から「建設業者の忙しさ」を把握しよう!
(2)「建設業者の忙しさ」を把握する具体的なアプローチとは!
(3)「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう!
(4)建設業者の供給状況を見抜いて実プロジェクトに応用しよう!
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-価格編」はこちらから↓
(1)「建築費」とは!?と聞かれたら!
(2)「建築費」ってどうやって算出されるの!?
(3)実務で使われる「概算」の方法とは!?
(4)「建築費」に影響を与える要因とは!?
(5)「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチとは!?
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-建設市場予測編」はこちらから↓
(1)「建設市場」は「予想」でなく「予測」しよう!
(2)建築費が高騰/下落する仕組みとは!?
(3)建築費がいつ頃下落するか予測しよう!
「関連記事-海外建設市場シリーズ」はこちらから↓
(1)世界62か国で建設費が最も高い水準なのは!?
(2)世界の建設市場における労務費を比べてみる!
(3)世界における建設市場規模はどの程度か!?
「関連記事-建設統計からみた建設市場シリーズ」はこちらから↓
(1)2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は!?
(2)建設市場における「受注高」「施工高」「未消化工事高」の水準は!?