戸建て住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？【2023年版】
【坪単価で把握する戸建て住宅の建築費｜2023年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握するコラム「坪単価で把握する建築費」シリーズ、今回は戸建て住宅の場合として、2022年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきます。
一般に、戸建て住宅の建築費は建物の構造や地域によって異なるので、下記のように大きくは構造別の視点から都道府県別の建築費水準や近年の傾向について把握していきます。
- 1. 構造別にみた戸建て住宅の建築費水準
- 2. 木造戸建て住宅（持家用）の建築費水準
- 3. 木造戸建て住宅（分譲用）の建築費水準
- 4. 鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の建築費水準
- 5. 鉄筋コンクリート戸建て住宅の建築費水準
1. 構造別でみた戸建て住宅の建築費水準は？
1-1）持家用木造の坪単価は坪あたり62.9万円の水準に
まず、2022年の全国における戸建て住宅の建築費を構造別でみてみると、坪単価が最も高い水準となったのは鉄骨鉄筋コンクリート造の場合で112.7（万円/坪）でした。続いて、鉄筋コンクリート造、鉄骨造（プレハブ工法）がそれぞれ108.0（万円/坪）、99.6（万円/坪）の水準となっています。一方、木造の場合は持家用の場合における坪単価が62.9（万円/坪）、分譲用では50.2（万円/坪）となり、ここで取り上げた5種類の構造で最も低い水準となっています。（下図参照）
2. 木造戸建て住宅（持家用）の建築費水準は？
2-1）都道府県別でみた木造戸建て住宅（持家用）の坪単価、最も高い水準は沖縄、次いで北海道、新潟が高水準に
木造戸建て住宅（持家用）の2022年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準となったのは沖縄の74.8（万円/坪）で、北海道の68.4（万円/坪）、新潟の67.8（万円/坪）、香川の67.7（万円/坪）、富山の66.5（万円/坪）が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは大阪の57.3（万円/坪）で、奈良の58.8（万円/坪）、東京の59.1（万円/坪）、和歌山の59.3（万円/坪）と続いています。（下図参照）
木造戸建て住宅（持家用）の特徴としては、概ね各都道府県別における建築費水準が全国平均である62.9（万円/坪）の水準から±5万円程度の間に収まっていることが挙げられます。
2-2）木造戸建て住宅（持家用）の場合における建築費の傾向は？
①全国における坪単価の水準は62.9（万円/坪）と上昇傾向が継続
2011年から2022年までの全国における木造戸建て住宅（持家用）の建築費水準を見てみると、2011年の54.5（万円/坪）から2022年の62.9（万円/坪）まで継続的な上昇傾向で推移して、過去最高の水準となっていることが分かります。毎年の変動は坪あたり約5千円から1万円5千円程度の上昇で推移しており、2022年のまでの11年間で約15.5%上昇していることが読み取れます。（下図参照）
②東京における坪単価の水準は59.6（万円/坪）と前年から下落へ
続いて、東京における木造戸建て住宅（持家用）の建築費水準を見てみると、2011年の61.7（万円/坪）より2019年の62.4（万円/坪）まで概ね横ばい傾向で推移していましたが、2022年は59.4（万円/坪）の水準と、2020年から3年連続で下落していることが読み取れます。（下図参照）
3. 木造戸建て住宅（分譲用）の建築費水準は？
3-1）都道府県別でみた木造戸建て住宅（分譲用）の坪単価、最も高い水準は島根、次いで北海道が高水準に
木造戸建て住宅（分譲用）の2022年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは島根の60.8（万円/坪）で、北海道、高知、長野がそれぞれ59.6（万円/坪）、58.9（万円/坪）、57.1（万円/坪）と続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは福島の44.0（万円/坪）で、群馬の44.9（万円/坪）、茨城の45.4（万円/坪）、岐阜の45.7（万円/坪）と続いています。なお、東京における建築費の水準は53.5（万円/坪）でした。（下図参照）
木造戸建て住宅（分譲用）の建築費水準は、同じ木造である持家用の戸建て住宅の建築費水準より全国平均でみた場合に坪あたりで10万円以上低い水準となっていることが特徴として挙げられます。
3-2）木造戸建て住宅（分譲用）の場合における建築費の傾向は？
①全国における坪単価の水準は上昇し50.2（万円/坪）と過去最高の水準に
2011年から2022年までの全国における木造戸建て住宅（分譲用）の建築費水準を見てみると、2011年の48.6（万円/坪）から2021年の48.8（万円/坪）まで概ね横ばい傾向で推移していることが分かります。しかしながら、2022年の時点では50.2（万円/坪）と、これまでで最も高い水準となっていることが読み取れます。（下図参照）
②東京における坪単価の水準は53.5（万円/坪）と上昇に転じる
東京における木造戸建て住宅（分譲用）の建築費水準を見てみると、2011年の53.4（万円/坪）から2014年の51.4（万円/坪）まで緩やかに下落した後、2019年の53.6（万円/坪）まで上昇傾向で推移していました。そこから2021年の52.6（万円/坪）まで2年連続で下落していたが、2022年は上昇へ転じています。（下図参照）
4. 鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の建築費水準は？
4-1）都道府県別でみた鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の坪単価は東京、神奈川で高水準に
鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の2022年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の118.8（万円/坪）で、神奈川の113.9（万円/坪）、福井の104.3（万円/坪）、大阪の103.9（万円/坪）、京都の102.9（万円/坪）がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは佐賀の85.8（万円/坪）で、岩手の87.2（万円/坪）、宮城の87.4（万円/坪）、茨城の89.2（万円/坪）と続いています。（下図参照）
鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の特徴としては、東京と神奈川における建築費水準が110（万円/坪）を超え、他の地域と比較して顕著に高い水準である点、また、多くの地域で全国平均である99.6（万円/坪）を下回る水準となっている点が挙げられます。
4-2）鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の場合における建築費の傾向は？
①全国における坪単価の水準は99.6（万円/坪）と11年連続の上昇に
2011年から2022年までの全国における鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の建築費水準を見てみると、2011年の73.5（万円/坪）から2022年まで継続的に右肩上がりで上昇推移していることが分かります。2022年の時点では99.6（万円/坪）の水準と、この11年間で約35.6%も上昇し、過去最高の水準となっていることが読み取れます。（下図参照）
②東京における坪単価の水準は118.8（万円/坪）と11年連続の上昇へ
続いて、東京における鉄骨戸建て住宅（プレハブ工法）の建築費水準を見てみると、全国と同様に、2011年の86.4（万円/坪）から右肩上がりで上昇し2022年の時点では118.8（万円/坪）と、この11年間で37.4%の上昇となっていることが分かります。（下図参照）
5. 鉄筋コンクリート戸建て住宅の建築費水準は？
5-1）都道府県別でみた鉄筋コンクリート戸建て住宅の坪単価、最も高い水準は東京、次いで兵庫、神奈川、京都が高水準に
鉄筋コンクリート戸建て住宅の2022年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の163.5（万円/坪）で、兵庫の148.9（万円/坪）、神奈川の148.1（万円/坪）、さらには京都の138.9（万円/坪）が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは三重の80.1（万円/坪）で、鹿児島の81.8（万円/坪）、静岡の88.7（万円/坪）、沖縄の89.2（万円/坪）と続いています。（下図参照）
鉄筋コンクリート戸建て住宅の特徴としては、東京、兵庫、神奈川における建築費水準が140（万円/坪）を超え、他の地域と比較して顕著に高い水準である点が挙げられます。
5-2）鉄筋コンクリート戸建て住宅の場合における建築費の傾向は？
①全国における坪単価の水準は108.0（万円/坪）と過去最高の水準へ
2011年から2022年までの全国における鉄筋コンクリート戸建て住宅の建築費水準を見てみると、2011年の72.1（万円/坪）から2020年の96.9（万円/坪）まで9年連続の継続的な上昇傾向で推移しました。そこから2021年は96.6（万円/坪）と僅かながら下落に転じましたが、2022年は108.0（万円/坪）と過去最高の水準まで上昇しています。また、2022年における建築費水準は2011年の水準と比較して約49.8%高い水準にあることが読み取れます。（下図参照）
②東京における坪単価の水準は163.5（万円/坪）と過去最高の水準へ
東京における鉄筋コンクリート戸建て住宅の建築費水準を見てみると、底であった2012年の94.1（万円/坪）から2017年の136.7（万円/坪）まで5年間で約41%上昇しました。その後、2018年に129.0（万円/坪）と下落した後、2019年は141.8（万円/坪）まで上昇しています。そこから、2021年の135.8（万円/坪）まで2年連続で下落していましたが、2022年は163.5（万円/坪）と過去最高の水準まで上昇していることが分かります。（下図参照）
以上のように、今回は建物用途が戸建て住宅の場合における建築費の水準について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や都市別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む方法としては適している一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
◇実務で役立つ建築費の相場【最新版】TOPへ
◇実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】TOPへ
◇業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】TOPへ
◇職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】TOPへ
◇購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】TOPへ
◇過去データを見る｜実務で役立つ建築費の相場【過去データ】TOPへ
参考｜主要データ一覧
戸建て住宅の建築費水準｜木造
| 都道府県 | 坪単価 （持家用） | 坪単価 （分譲用） |
|---|---|---|
| 沖縄県 | 74.8（万円/坪） | 50.0（万円/坪） |
| 北海道 | 68.4（万円/坪） | 59.6（万円/坪） |
| 新潟県 | 67.8（万円/坪） | 49.8（万円/坪） |
| 香川県 | 67.7（万円/坪） | 56.5（万円/坪） |
| 富山県 | 66.5（万円/坪） | 52.1（万円/坪） |
| 岡山県 | 66.4（万円/坪） | 53.6（万円/坪） |
| 石川県 | 65.9（万円/坪） | 47.1（万円/坪） |
| 山口県 | 65.7（万円/坪） | 50.4（万円/坪） |
| 山形県 | 65.5（万円/坪） | 51.9（万円/坪） |
| 高知県 | 65.4（万円/坪） | 58.9（万円/坪） |
| 福島県 | 65.3（万円/坪） | 44.0（万円/坪） |
| 岐阜県 | 65.3（万円/坪） | 45.7（万円/坪） |
| 三重県 | 65.3（万円/坪） | 51.6（万円/坪） |
| 岩手県 | 65.2（万円/坪） | 56.6（万円/坪） |
| 静岡県 | 65.2（万円/坪） | 47.5（万円/坪） |
| 熊本県 | 64.9（万円/坪） | 52.4（万円/坪） |
| 徳島県 | 64.9（万円/坪） | 54.1（万円/坪） |
| 福井県 | 64.8（万円/坪） | 45.8（万円/坪） |
| 山梨県 | 64.6（万円/坪） | 55.0（万円/坪） |
| 長野県 | 64.4（万円/坪） | 57.1（万円/坪） |
| 青森県 | 64.4（万円/坪） | 53.6（万円/坪） |
| 鳥取県 | 64.3（万円/坪） | 55.8（万円/坪） |
| 島根県 | 63.9（万円/坪） | 60.8（万円/坪） |
| 広島県 | 63.5（万円/坪） | 49.9（万円/坪） |
| 栃木県 | 63.3（万円/坪） | 45.9（万円/坪） |
| 鹿児島県 | 63.2（万円/坪） | 53.1（万円/坪） |
| 愛知県 | 63.1（万円/坪） | 49.8（万円/坪） |
| 秋田県 | 63.0（万円/坪） | 52.3（万円/坪） |
| 京都府 | 62.9（万円/坪） | 53.1（万円/坪） |
| 宮城県 | 62.9（万円/坪） | 49.0（万円/坪） |
| 大分県 | 62.8（万円/坪） | 48.7（万円/坪） |
| 長崎県 | 62.7（万円/坪） | 56.0（万円/坪） |
| 群馬県 | 62.4（万円/坪） | 44.9（万円/坪） |
| 愛媛県 | 62.3（万円/坪） | 55.8（万円/坪） |
| 福岡県 | 62.2（万円/坪） | 49.4（万円/坪） |
| 茨城県 | 62.1（万円/坪） | 45.4（万円/坪） |
| 宮崎県 | 61.8（万円/坪） | 49.5（万円/坪） |
| 千葉県 | 60.9（万円/坪） | 50.5（万円/坪） |
| 埼玉県 | 60.6（万円/坪） | 47.4（万円/坪） |
| 滋賀県 | 60.4（万円/坪） | 47.0（万円/坪） |
| 兵庫県 | 60.1（万円/坪） | 50.7（万円/坪） |
| 神奈川県 | 60.0（万円/坪） | 50.0（万円/坪） |
| 佐賀県 | 60.0（万円/坪） | 48.1（万円/坪） |
| 和歌山県 | 59.3（万円/坪） | 46.5（万円/坪） |
| 東京都 | 59.1（万円/坪） | 53.5（万円/坪） |
| 奈良県 | 58.8（万円/坪） | 49.3（万円/坪） |
| 大阪府 | 57.3（万円/坪） | 49.7（万円/坪） |
| 全国平均 | 62.9（万円/坪） | 50.2（万円/坪） |
※建築費（万円/坪）は工事費予定額（円）を床面積（坪）で除した値
注）坪単価を算出する際に対象としたデータについて、戸数が10戸未満の場合は、ばらつきを考慮して対象外とした。
「坪単価で把握する建築費」はこちらから↓
・戸建て住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・シェアハウスの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・マンションの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・事務所の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・工場の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・倉庫の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・商業店舗の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・病院の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・福祉介護施設の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・学校の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－需要編」はこちらから↓
（１）主力とするターゲットや商品開発を建設需要から導こう！
（２）知りたい情報に辿り着ける３つのアプローチ！
（３）簡単に無料で手に入る「統計データ」を積極的に活用しよう！
（４）需要の傾向を読み解いて市場の先行きを考えよう！
（５）「影響要因」を把握して説得力のある需要予測を導き出そう！
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－供給編」はこちらから↓
（１）色々な視点から「建設業者の忙しさ」を把握しよう！
（２）「建設業者の忙しさ」を把握する具体的なアプローチとは！
（３）「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう！
（４）建設業者の供給状況を見抜いて実プロジェクトに応用しよう！
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－価格編」はこちらから↓
（１）「建築費」とは！？と聞かれたら！
（２）「建築費」ってどうやって算出されるの！？
（３）実務で使われる「概算」の方法とは！？
（４）「建築費」に影響を与える要因とは！？
（５）「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチとは！？
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－建設市場予測編」はこちらから↓
（１）「建設市場」は「予想」でなく「予測」しよう！
（２）建築費が高騰/下落する仕組みとは！？
（３）建築費がいつ頃下落するか予測しよう！
「関連記事-海外建設市場シリーズ」はこちらから↓
（１）世界62か国で建設費が最も高い水準なのは！？
（２）世界の建設市場における労務費を比べてみる！
（３）世界における建設市場規模はどの程度か！？
「関連記事-建設統計からみた建設市場シリーズ」はこちらから↓
（１）2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は！？
（２）建設市場における「受注高」「施工高」「未消化工事高」の水準は！？
