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住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2020年版】

【坪単価で把握する建築費2020年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握する「坪単価で把握する建築費特集」、今回は建物用途が住宅の場合として、2019年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきたいと思います。

住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?-坪単価で把握する建築費(1)

構造別でみた住宅の坪単価は木造で約56.3万円/坪の水準に!


まず、全国における住宅の建築費を構造別でみてみると、坪単価が最も高い水準となったのは鉄骨コンクリート造の場合で82.4(万円/坪)でした。次いで鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造がそれぞれ79.6(万円/坪)、79.2(万円/坪)の水準になりました。一方、木造の場合は、坪単価が56.3(万円/坪)とここで取り上げた4種類の構造において最も低い水準となっています。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|住宅(全国)構造別


また、上図において、全構造平均の坪単価は63.6(万円/坪)と木造と鉄骨造の水準の間に位置していますが、これは、国内における住宅建築の約66%が木造として建設されていることに影響を受けている為と考えられます。(下図参照)


住宅建築の構造別割合


都道府県別でみた住宅の坪単価は!?


①木造住宅の建築費は長野と沖縄が最も高い水準に!
木造住宅の建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準となったのは長野と沖縄で62.5(万円/坪)と61.0(万円/坪)でした。そして、三重、山梨、岡山がそれぞれ60.6(万円/坪)、60.2(万円/坪)、59.3(万円/坪)と続きました。また、東京における坪単価の水準は58.5(万円/坪)でした。(下図参照)


建設費水準(万円/坪|木造 住宅


一方、坪単価が最も低い水準であったのは宮崎の52.3(万円/坪)、次いで大阪の52.6(万円/坪)となっています。木造住宅の建築費水準は都道府県別に見た場合、概ね52.0(万円/坪)から63.0(万円/坪)の11万円の範囲に収まっていることも特徴として挙げられます。

②鉄筋コンクリート造住宅の坪単価は東京が顕著に高い水準に!
鉄筋コンクリート造住宅における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準は東京の104.0(万円/坪)、次いで青森、群馬、神奈川がそれぞれ95.8(万円/坪)91.7(万円/坪)90.0(万円/坪)の水準となっています。多くの地域における坪単価が90.0(万円/坪)未満であることを踏まえると、東京における水準が突出して高いことが分かります。

一方、坪単価が最も低い水準となったのは愛媛の51.9(万円/坪)で、大分の56.5(万円/坪)、鳥取の57.7(万円/坪)、北海道の60.6(万円/坪)が続いています。このように、木造の場合と異なり、鉄筋コンクリート造の場合における住宅の建築費水準は都道府県の間に大きな違いがあることが読み取れます。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|鉄筋コンクリート造 住宅


③鉄骨造住宅の建築費は東京、神奈川、京都で高水準に!
鉄骨造住宅の建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準は東京の96.7(万円/坪)で、神奈川の86.0(万円/坪)、京都の85.4(万円/坪)、沖縄の83.8(万円/坪)がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準は山形の50.7(万円/坪)、次いで徳島の63.0(万円/坪)、宮崎の63.7(万円/坪)となっています。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|鉄骨造 住宅


東京や全国における住宅建築費の傾向は!?


①木造住宅の場合における建築費の傾向は?
2011年から2019年までの東京における木造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2012年の57.2(万円/坪)から2019年の58.5(万円/坪)まで僅かですが上昇傾向にあります。しかしながら、2011年から2018年まで大きく変動することなく、概ね坪あたり57万円から58万円前後と横ばいの傾向で推移しています。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|木造住宅(東京都)


一方、全国における木造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の52.2(万円/坪)から2019年の56.3(万円/坪)まで年々右肩上がりで推移しており、この間に建築費は坪あたりでは約4万円高い水準へ、上昇率でみると約7.8%上昇しています。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|木造住宅(全国)


②鉄筋コンクリート造住宅の場合における建築費の傾向は?
続いて、2011年から2019年までの東京における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2011年の71.6(万円/坪)から2017年の106.7(万円/坪)へ約49%と大きく上昇しました。その後、2018年に102.4(万円/坪)の水準へ若干下落したものの、2019年の時点では104.0(万円/坪)の水準まで再び上昇していることが分かります。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|鉄筋コンクリート造 住宅(東京都)


一方、全国における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、2012年の59.7(万円/坪)から2017年の80.6(万円/坪)へ約35%と大きく上昇しています。その後、2018年に80.2(万円/坪)と僅かに下落しましたが、東京と同様、2019年の時点では82.4(万円/坪)の水準と上昇していることが読み取れます。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|鉄筋コンクリート造 住宅(全国)


③鉄骨造住宅の場合における建築費の傾向は?
木造住宅や鉄筋コンクリート造住宅と同様に、東京における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の76.6(万円/坪)から右肩上がりの上昇傾向で推移し、2019年の時点では96.7(万円/坪)と8年間で約26%上昇していることが読み取れます。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|鉄骨造 住宅(東京都)


また、全国における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、東京の場合と同様に2011年を底として2019年の79.2(万円/坪)まで継続的に上昇し、この8年間で約22%上昇していることが分かります。(下図参照)


建設費水準(万円/坪)|鉄骨造 住宅(全国)


このように、住宅における建築費の傾向は、木造では大きく変動していない一方、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の場合では変動が大きいことが分かります。また、東京と全国で見た2019年の建築費水準は、構造にかかわらず2018年の水準から上昇していることも分かりました。

以上のように、今回は「坪単価で把握する建築費」シリーズとして、建物用途が住宅の場合における建築費の水準について坪単価をベースに紹介しました。

また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や都市別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む方法としては適している一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。

その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。

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参考|主要データ一覧


住宅の建築費水準|木造
都道府県坪単価
長野県62.5(万円/坪)
沖縄県61.0(万円/坪)
三重県60.6(万円/坪)
山梨県60.2(万円/坪)
岡山県59.3(万円/坪)
鳥取県59.1(万円/坪)
香川県59.0(万円/坪)
高知県58.9(万円/坪)
新潟県58.8(万円/坪)
北海道58.5(万円/坪)
東京都58.5(万円/坪)
静岡県58.4(万円/坪)
富山県58.3(万円/坪)
山口県58.3(万円/坪)
岩手県58.2(万円/坪)
愛知県57.9(万円/坪)
島根県57.6(万円/坪)
福島県57.5(万円/坪)
石川県56.7(万円/坪)
京都府56.4(万円/坪)
宮城県56.3(万円/坪)
山形県56.2(万円/坪)
福井県56.1(万円/坪)
広島県56.1(万円/坪)
愛媛県56.0(万円/坪)
岐阜県56.0(万円/坪)
熊本県56.0(万円/坪)
栃木県55.9(万円/坪)
茨城県55.5(万円/坪)
徳島県55.5(万円/坪)
群馬県55.4(万円/坪)
千葉県55.4(万円/坪)
鹿児島県55.4(万円/坪)
長崎県55.2(万円/坪)
秋田県55.2(万円/坪)
兵庫県54.9(万円/坪)
神奈川県54.9(万円/坪)
青森県54.3(万円/坪)
奈良県53.9(万円/坪)
埼玉県53.8(万円/坪)
福岡県53.8(万円/坪)
大分県53.7(万円/坪)
佐賀県53.7(万円/坪)
滋賀県53.1(万円/坪)
和歌山県52.8(万円/坪)
大阪府52.6(万円/坪)
宮崎県52.3(万円/坪)
全国平均56.3(万円/坪)

出典 | 建築着工統計調査(国交省)に基づいて作成(2019年時点)
※建築費(万円/坪)は工事費予定額(円)を床面積(坪)で除した値
注)坪単価を算出する際に対象としたデータについて、建物数が10棟未満の場合は、ばらつきを考慮して対象外とした。

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