賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2020年版】
【坪単価で把握する賃貸アパートの建築費|2020年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握するコラム「坪単価で把握する建築費」シリーズ、今回は賃貸アパートの場合として、2019年の国内における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介していきます。
一般に、賃貸アパートの建築費は建物の構造や地域によって異なるので、下記のように大きくは構造別の視点から都道府県別の建築費水準や近年の傾向について把握していきます。
- 1. 構造別でみた賃貸アパートの建築費水準
- 2. 賃貸アパート(木造)の建築費水準(都道府県別)
- 3. 賃貸アパート(木造)における建築費の傾向
- 4. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準(都道府県別)
- 5. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の傾向
1. 構造別でみた賃貸アパートの建築費水準は?
木造では約56万円/坪、プレハブ鉄骨造では約78万円/坪の水準に!
まず、全国における賃貸アパートの建築費を構造別でみてみると、鉄骨造(プレハブ工法)の場合で77.8(万円/坪)となっています。一方、構造が木造の賃貸アパートにおける建築費は55.8(万円/坪)の水準と、構造が鉄骨造(プレハブ工法)の場合と比較して坪あたりで約20万円程度低い水準となっています。(下図参照)
2. 賃貸アパート(木造)の建築費水準は?
都道府県別でみた賃貸アパート(木造)の坪単価、最も高い水準は沖縄、次いで徳島、山梨、東京が高水準に!
賃貸アパート(木造)の2019年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは沖縄の76.9(万円/坪)で、徳島の73.0(万円/坪)、山梨の68.1(万円/坪)、東京の65.6(万円/坪)がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは高知の39.5(万円/坪)で、宮崎の40.1(万円/坪)、佐賀の41.6(万円/坪)と続いています。(下図参照)
賃貸アパート(木造)の特徴としては、沖縄と徳島における建築費の水準が他の地域と比較して突出して高い水準にある点、また沖縄と徳島以外の地域における建築費の水準に地域格差が大きい点が挙げられます。
3. 賃貸アパート(木造)における建築費の傾向は?
①全国における坪単価の水準は直近7年間で約11%上昇へ!
2011年から2019年までの全国における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、2011年の50.4(万円/坪)から2012年の50.2(万円/坪)まで概ね横ばいで推移した後、2019年まで継続的な上昇傾向で推移していることが分かります。そして2019年の時点では55.8(万円/坪)の水準と、2012年からの7年間で約11%上昇しています。(下図参照)
②東京における坪単価の水準は下落傾向に転換へ!
続いて、東京における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、2011年の64.5(万円/坪)より若干の上昇下落を繰り返すものの、2019年の時点では65.6(万円/坪)となっております。建築費の水準は2015年の63.5(万円/坪)から3年続けて上昇傾向で推移し、2018年の65.9(万円/坪)まで約3.8%上昇していましたが、2019年は概ね横ばいながら下落に転じていることが分かります。(下図参照)
③大阪における坪単価の水準は若干の上昇傾向が継続!
大阪における賃貸アパート(木造)の建築費水準を見てみると、底である2011年の48.9(万円/坪)から2015年の51.9(万円/坪)までは上昇傾向で推移しました。その後、2017年の49.8(万円/坪)まで継続的な下落傾向で推移しましたが、2018年に上昇へ転じ、2019年の時点では51.3(万円/坪)と、2017年から2年連続の上昇傾向で推移していることが読み取れます。(下図参照)
4. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準は?
都道府県別でみた賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の坪単価、最も高い水準は東京、次いで神奈川、富山、石川が高水準に!
賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の2019年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の96.7(万円/坪)で、神奈川の83.0(万円/坪)、さらには富山の81.4(万円/坪)、石川の79.7(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは栃木の58.9(万円/坪)で、徳島の60.8(万円/坪)、宮城の62.1(万円/坪)と続いています。(下図参照)
賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の特徴としては、東京における建築費の水準が他の地域と比較して突出して高い水準にある点、また木造賃貸アパートの場合と同様に東京以外の地域において建築費の地域格差が大きい点が挙げられます。
5. 賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)における建築費の傾向は?
①全国における坪単価の水準はこの8年間で約25%上昇へ!
2011年から2019年まで全国における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の62.2(万円/坪)から2019年まで継続的な上昇傾向にあることが分かります。2019年の時点では77.8(万円/坪)と、2011年から8年間で約25.1%と大きく上昇していることが読み取れます。(下図参照)
②東京における坪単価の水準は2011年より2割以上と大きく上昇!
東京における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の77.6(万円/坪)より2019年の96.7(万円/坪)まで継続的に上昇傾向で推移していることが分かります。全国でみた場合と同様に、建築費の水準はこの8年間で大きく上昇し、2011年からの上昇率は約24.5%となっています。(下図参照)
③大阪における坪単価の水準は下落に転換へ!
大阪における賃貸アパート(鉄骨造プレハブ工法)の建築費水準を見てみると、2011年の61.1(万円/坪)から2015年の67.3(万円/坪)まで継続的に上昇傾向で推移していることが読み取れます。そして、2016年に65.6(万円/坪)と一度下落し、その後は2018年の71.9(万円/坪)まで上昇傾向で推移していましたが、2019年の時点では71.2(万円/坪)と再び下落に転じています。なお、2011年から2019年まで8年間の上昇率は16.6%と全国や東京の場合まで上昇していないものの、大きく上昇していることが分かります。(下図参照)
以上のように、今回は建物用途が賃貸アパートの場合における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や地域別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む目的には適っている一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
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参考|主要データ一覧
賃貸アパートの建築費水準
都道府県 | 坪単価(木造) | 坪単価(鉄骨造プレハブ工法) |
---|---|---|
沖縄県 | 76.9(万円/坪) | - |
徳島県 | 73.0(万円/坪) | 60.8(万円/坪) |
山梨県 | 68.1(万円/坪) | 63.9(万円/坪) |
東京都 | 65.6(万円/坪) | 96.7(万円/坪) |
群馬県 | 62.8(万円/坪) | 63.7(万円/坪) |
山口県 | 61.7(万円/坪) | 72.7(万円/坪) |
島根県 | 61.4(万円/坪) | 74.9(万円/坪) |
千葉県 | 60.6(万円/坪) | 77.4(万円/坪) |
栃木県 | 60.4(万円/坪) | 58.9(万円/坪) |
長野県 | 60.2(万円/坪) | 79.4(万円/坪) |
埼玉県 | 59.3(万円/坪) | 79.1(万円/坪) |
和歌山県 | 58.9(万円/坪) | 75.7(万円/坪) |
三重県 | 58.6(万円/坪) | 76.2(万円/坪) |
岩手県 | 58.6(万円/坪) | 71.5(万円/坪) |
福島県 | 58.6(万円/坪) | 74.7(万円/坪) |
愛媛県 | 58.5(万円/坪) | 66.9(万円/坪) |
神奈川県 | 58.2(万円/坪) | 83.0(万円/坪) |
宮城県 | 57.8(万円/坪) | 71.8(万円/坪) |
愛知県 | 57.7(万円/坪) | 74.3(万円/坪) |
岡山県 | 57.1(万円/坪) | 68.5(万円/坪) |
京都府 | 56.8(万円/坪) | 72.6(万円/坪) |
広島県 | 56.1(万円/坪) | 71.7(万円/坪) |
兵庫県 | 55.9(万円/坪) | 74.1(万円/坪) |
福井県 | 54.8(万円/坪) | 77.7(万円/坪) |
鳥取県 | 54.7(万円/坪) | 69.0(万円/坪) |
滋賀県 | 54.5(万円/坪) | 68.5(万円/坪) |
新潟県 | 54.4(万円/坪) | 68.0(万円/坪) |
静岡県 | 54.3(万円/坪) | 76.2(万円/坪) |
熊本県 | 53.7(万円/坪) | 68.9(万円/坪) |
奈良県 | 52.4(万円/坪) | 68.9(万円/坪) |
長崎県 | 52.0(万円/坪) | 71.3(万円/坪) |
石川県 | 51.6(万円/坪) | 79.7(万円/坪) |
大阪府 | 51.3(万円/坪) | 71.2(万円/坪) |
富山県 | 50.8(万円/坪) | 81.4(万円/坪) |
茨城県 | 50.7(万円/坪) | 68.6(万円/坪) |
青森県 | 49.9(万円/坪) | 67.6(万円/坪) |
福岡県 | 49.4(万円/坪) | 71.0(万円/坪) |
岐阜県 | 48.0(万円/坪) | 73.5(万円/坪) |
秋田県 | 46.6(万円/坪) | 66.8(万円/坪) |
山形県 | 46.6(万円/坪) | 71.9(万円/坪) |
北海道 | 46.3(万円/坪) | 67.4(万円/坪) |
大分県 | 45.9(万円/坪) | 68.7(万円/坪) |
鹿児島県 | 45.5(万円/坪) | 69.9(万円/坪) |
佐賀県 | 41.6(万円/坪) | 64.9(万円/坪) |
宮崎県 | 40.1(万円/坪) | 62.1(万円/坪) |
高知県 | 39.5(万円/坪) | 73.5(万円/坪) |
全国平均 | 55.8(万円/坪) | 77.8(万円/坪) |
出典 | 建築着工統計調査(国交省)に基づいて作成(2019年時点)
※建築費(万円/坪)は工事費予定額(円)を床面積(坪)で除した値
注)坪単価を算出する際に対象としたデータについて、戸数が10戸未満の場合は、ばらつきを考慮して対象から抜いている。

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