全国の構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か?【2024年版】
【坪単価で把握する構造別の建築費|2024年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握するコラム「坪単価で把握する建築費」シリーズ、今回は構造別の場合として、2023年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきます。
一般に、建築費は木造や鉄骨といった建物の構造や建設する地域によって異なる為、下記のように構造別の視点から都道府県別の建築費水準や近年の全国における傾向について把握していきます。
- 1. 全国の構造別でみた建築費水準の比較
- 2. 全構造平均の建築費水準(都道府県別)と傾向
- 3. 木造の建築費水準(都道府県別)と傾向
- 4. 鉄骨造の建築費水準(都道府県別)と傾向
- 5. 鉄筋コンクリート造の建築費水準(都道府県別)と傾向
- 6. 鉄骨鉄筋コンクリート造の建築費水準(都道府県別)と傾向
1. 全国の構造別でみた建築費水準の比較
全構造平均では坪あたり84.8万円の水準に
まず、2023年の全国における構造別の建築費をみてみると、鉄骨鉄筋コンクリート造の場合に121.0(万円/坪)と最も高い水準に、次いで鉄筋コンクリート造が103.7(万円/坪)となっています。また、鉄骨造では92.8(万円/坪)の水準に、木造の場合は67.4(万円/坪)と最も低い水準となりました。
また、上図において、全構造平均の坪単価は84.8(万円/坪)と木造と鉄骨の間に位置する水準となっていますが、これは、国内における建築物の約75%が木造か鉄骨造として建設されていることに影響を受けている為と考えられます。(下図参照)
2. 全構造平均の建築費水準(都道府県別)と傾向
都道府県別でみた坪単価、最も高い水準は東京、次いで北海道、石川が高水準に
まず、2023年における全構造平均の建築費を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の117.4(万円/坪)でした。また、北海道の98.8(万円/坪)、石川の92.9(万円/坪)、山梨の91.3(万円/坪)、鹿児島の88.2(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは滋賀の69.0(万円/坪)で、茨城の69.5(万円/坪)、佐賀の71.6(万円/坪)、和歌山の72.7(万円/坪)と続いています。(下図参照)
全構造平均の場合における特徴としては、東京における建築費が坪あたり110万円超と他の地域と比較して高い水準となっている点が挙げられます。
2023年の全国における坪単価の水準は84.8(万円/坪)と過去最高の水準へ
続いて、2011年から2023年までの全国における全構造平均の建築費水準を見てみると、2012年の54.8(万円/坪)から2017年の67.9(万円/坪)まで上昇した後、2018年は67.2(万円/坪)まで下落しました。また、2019年に70.6(万円/坪)まで上昇し、2020年は概ね横ばいで推移しましたが、2023年の84.8(万円/坪)まで3年連続の上昇で最も高い水準になっていることが読み取れます。なお、底であった2012年から2023年までの11年間で約54.7%と5割以上も上昇しています。(下図参照)
2023年の全国における建築費の変動率は前年比14.7%の上昇へ
ここで、2023年の全構造平均でみた建築費水準の変動を見てみると、47都県のうち41道府県において対前年比で上昇した一方、6都府県で下落となったことが読み取れます。また、全国における建築費の変動率は2022年から14.7%の上昇となっています。(下図参照)
3. 木造の建築費水準(都道府県別)と傾向
都道府県別でみた木造の坪単価、最も高い水準は長野、次いで北海道、島根が高水準に
まず、2023年における木造の建築費を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは長野の83.1(万円/坪)でした。また、北海道の77.3(万円/坪)、島根の75.8(万円/坪)、高知の74.9(万円/坪)、山梨の74.4(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは埼玉の60.9(万円/坪)で、京都の61.6(万円/坪)、大阪の61.7(万円/坪)、沖縄の62.6(万円/坪)と続いています。(下図参照)
木造の特徴としては、各都道府県における建築費が坪あたり67.4万円から-7万円~+10万円の範囲に収まっており(長野県は除く)、建設地域によって乖離が小さい点が挙げられます。
2023年の全国における坪単価の水準は67.4(万円/坪)と12年連続の上昇へ
続いて、2011年から2023年までの全国における木造の建築費水準を見てみると、2011年の51.8(万円/坪)から2022年の58.2(万円/坪)まで11年連続の緩やかな上昇傾向にあり、2023年は67.4(万円/坪)と大きく上昇していることが読み取れます。また、2011年から2023年までの12年間では、約30.1%上昇しています。(下図参照)
2023年の全国における建築費の変動率は前年比15.9%の上昇へ
ここで、2023年の木造における建築費水準の変動を見てみると、47都道府県全ての地域において対前年比で上昇したことが読み取れます。また、全国における建築費の変動率は2022年から15.9%上昇しました。(下図参照)
4. 鉄骨造の建築費水準(都道府県別)と傾向
都道府県別でみた鉄骨造の坪単価、最も高い水準は東京、次いで北海道が高水準に
まず、2023年における鉄骨造の建築費を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の136.7(万円/坪)でした。また、北海道の122.5(万円/坪)、山梨の112.1(万円/坪)、石川の110.0(万円/坪)、大阪の101.5(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは鹿児島の66.3(万円/坪)で、佐賀の68.1(万円/坪)、沖縄の70.4(万円/坪)、香川の72.5(万円/坪)と続いています。(下図参照)
鉄骨造の特徴としては、東京における建築費が坪あたり130万円以上と他の地域と比較して非常に高い水準となっている点、また建築費の地域格差がみられ、建設地域によって乖離が大きい点が挙げられます。
2023年の全国における坪単価の水準は92.8(万円/坪)と過去最高の水準へ
続いて、2011年から2023年までの全国における鉄骨造の建築費水準を見てみると、2012年の51.4(万円/坪)から2017年の70.8(万円/坪)まで5年連続で上昇したことが分かります。そこから、2018年の70.7(万円/坪)まで概ね横ばいながら下落した後、2020年の76.0(万円/坪)まで上昇しています。また、2021年は75.0(万円/坪)の水準まで下落しましたが、2022年は79.7(万円/坪)、2023年は92.8(万円/坪)と過去最高の水準まで上昇していることが分かります。なお、底であった2012年から2023年までの10年間で約80.5%も上昇しました。(下図参照)
2023年の全国における建築費の変動率は前年比16.4%の上昇へ
ここで、2023年の鉄骨造における建築費の変動を見てみると、47都道府県のうち39都道府県において対前年比で上昇した一方、8県で下落となったことが読み取れます。また、全国における建築費の変動率は2022年から16.4%の上昇となっています。(下図参照)
5. 鉄筋コンクリート造の建築費水準(都道府県別)と傾向
都道府県別でみた鉄筋コンクリート造の坪単価、最も高い水準は鹿児島、次いで秋田が高水準に
まず、鉄筋コンクリート造の2023年における建築費を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは鹿児島の172.0(万円/坪)でした。また、秋田の170.2(万円/坪)、福井の169.5(万円/坪)、青森の158.0(万円/坪)、山梨の145.9(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは滋賀の63.4(万円/坪)で、栃木の72.8(万円/坪)、茨城の75.1(万円/坪)、兵庫の80.6(万円/坪)が続いています。(下図参照)
鉄筋コンクリート造の特徴としては、鹿児島と秋田、福島における建築費が坪あたり170万円前後と他の地域と比較して非常に高い水準となっている点、また、鉄骨造と同様に建築費の地域格差が大きい点が挙げられます。
2023年の全国における坪単価の水準は103.7(万円/坪)と前年から上昇に
続いて、2011年から2023年までの全国における鉄筋コンクリート造の建築費水準を見てみると、2012年の64.0(万円/坪)から2017年の87.6(万円/坪)まで5年連続の上昇傾向で推移した後、2018年の86.8(万円/坪)まで下落しました。そして、2019年の94.2(万円/坪)から2023年の103.7(万円/坪)まで上昇と下落を繰り返していることが読み取れます。なお、底であった2012年から2023年までの11年間で62.0%と6割以上も上昇しています。(下図参照)
2023年の全国における建築費の変動率は前年比13.3%の上昇へ
ここで、2023年の鉄筋コンクリート造における建築費水準の変動を見てみると、47都道府県のうち36都県において対前年比で上昇した一方、11道府県で下落となったことが読み取れます。また、全国における建築費の変動率は2022年から13.3%上昇しています。(下図参照)
6. 鉄骨鉄筋コンクリート造の建築費水準(都道府県別)と傾向
都道府県別でみた鉄骨鉄筋コンクリート造の坪単価、最も高い水準は北海道、次いで東京が高水準に
まず、鉄骨鉄筋コンクリート造の2023年における建築費を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは北海道の186.6(万円/坪)でした。また、東京の184.8(万円/坪)、兵庫の183.9(万円/坪)、新潟の180.8(万円/坪)、京都の135.6(万円/坪)が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは福岡の48.5(万円/坪)で、熊本の60.7(万円/坪)、千葉の62.3(万円/坪)、愛知の65.6(万円/坪)と続いています。(下図参照)
鉄骨鉄筋コンクリート造の特徴としては、北海道、東京、兵庫、新潟における建築費が坪あたり180万円超と他の地域と比較して顕著に高い水準となっている点、また、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合と同様に、建築費水準の地域格差が大きい点が挙げられます。
2023年の全国における坪単価の水準は121.0(万円/坪)と前年から下落へ
続いて、2011年から2023年までの全国における鉄骨鉄筋コンクリート造の建築費水準を見てみると、2012年の73.7(万円/坪)から2014年の91.2(万円/坪)まで上昇した後、2015年の86.6(万円/坪)まで下落しましたが、そこから2017年の115.7(万円/坪)まで3年連続で上昇しています。その後、2018年の100.4(万円/坪)から上昇下落を繰り返し、2022年は143.4(万円/坪)と2年連続で上昇し、過去最高の水準となっていることが分かります。2023年は反転して121.0(万円/坪)の水準へ下落しています。なお、底であった2012年から2023年までの11年間で約64.2%と6割以上も上昇していることが分かります。(下図参照)
2023年の全国における建築費の変動率は前年比15.6%の下落へ
ここで、2023年までの鉄骨鉄筋コンクリート造における建築費水準の変動を見てみると、13都道府県のうち6府県において対前年比で下落した一方、7都道県で上昇となったことが読み取れます。また、全国における建築費の変動率は2022年から15.6%下落しました。(下図参照)
以上のように、今回は構造別にみた建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や地域別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む目的には適っている一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
実務で役立つ建築費の相場【最新版】へ
実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】へ
業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】へ
職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】へ
購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】へ
実務で役立つ建築費の相場【過去データ】へ
関連記事-坪単価で把握する建築費
戸建て住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
シェアハウスの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
マンションの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
事務所の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
工場の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
倉庫の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
商業店舗の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か?
病院の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
福祉介護施設の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
学校の建築費は坪単価でどの程度の水準か?
構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か?
全国の用途・構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か?
関連記事-坪単価で把握する住宅価格の相場
住宅の相場は購入価格や坪単価でどの程度の水準か?
東京の住宅価格はどの程度の水準か?
神奈川の住宅価格はどの程度の水準か?
千葉の住宅価格はどの程度の水準か?
埼玉の住宅価格はどの程度の水準か?
大阪の住宅価格はどの程度の水準か?
福岡の住宅価格はどの程度の水準か?
北海道の住宅価格はどの程度の水準か?
沖縄の住宅価格はどの程度の水準か?
関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-需要編
主力とするターゲットや商品開発を建設需要から導こう
知りたい情報に辿り着ける3つのアプローチ
簡単に無料で手に入る統計データを積極的に活用しよう
需要の傾向を読み解いて市場の先行きを考えよう
影響要因を把握して説得力のある需要予測を導き出そう
関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-供給編
色々な視点から建設業者の忙しさを把握しよう
建設業者の忙しさを把握する具体的なアプローチとは
建設業者の忙しさは業者の規模別に把握しよう
建設業者の供給状況を見抜いてプロジェクトで応用しよう
関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-価格編
建築費とは?と聞かれたら
建築費ってどうやって算出されるの?
実務で使われる概算の方法とは
建築費に影響を与える要因とは
建築費の水準や傾向を把握するアプローチとは
関連記事-面白いほどよくわかる建設市場-建設市場予測編
建設市場は予想でなく予測しよう
建築費が高騰/下落する仕組みとは
建築費がいつ頃下落するか予測しよう
関連記事-海外建設市場シリーズ
世界62か国で建設費が最も高い水準なのは?
世界の建設市場における労務費を比べてみる
世界における建設市場規模はどの程度か?