マンションの建築費は坪単価でどの程度の水準か？【2022年版】
【坪単価で把握するマンションの建築費｜2022年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握するコラム「坪単価で把握する建築費」シリーズ、今回はマンションの場合として、2021年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきます。
一般に、マンションの建築費は分譲と賃貸の場合で、また、建設地域によって異なる為、下記のように分譲と賃貸の視点から都道府県別の建築費水準や近年の傾向について把握していきます。
- 1. 分譲マンションと賃貸マンションの建築費水準
- 2. 分譲マンションの建築費水準（都道府県別）
- 3. 分譲マンションにおける建築費の傾向
- 4. 賃貸マンションの建築費水準（都道府県別）
- 5. 賃貸マンションにおける建築費の傾向
1. 分譲マンションと賃貸マンションの建築費水準は？
分譲マンションでは坪あたり88.9万円、賃貸マンションでは坪あたり83.8万円の水準に
まず、全国におけるマンション（鉄筋コンクリート造）の建築費水準を見てみると、分譲マンションの場合で88.9（万円/坪）となっています。一方、賃貸マンションにおける建築費の水準は83.8（万円/坪）と、分譲マンションの場合と比較して坪あたりで約5万円程度低い水準となっています。（下図参照）
2. 分譲マンションの建築費水準は？
都道府県別でみた分譲マンションの坪単価、最も高い水準は長野、次いで東京が高水準に
分譲マンションの2021年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは長野の117.6（万円/坪）でした。また、東京の101.7（万円/坪）、静岡の101.3（万円/坪）、高知の97.3（万円/坪）、神奈川の94.7（万円/坪）が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは島根の45.3（万円/坪）で、新潟の49.2（万円/坪）、岩手の51.4（万円/坪）、熊本の58.8（万円/坪）と続いています。（下図参照）
分譲マンションの特徴としては、長野、東京と静岡における建築費が坪あたり100万円超と他の地域と比較して非常に高い水準となっている点、また建築費の地域格差がみられ、建設地域によって乖離が大きい点が挙げられます。
3. 分譲マンションにおける建築費の傾向は？
2021年の全国における坪単価の水準は88.9（万円/坪）と3年連続の上昇へ
2011年から2021年までの全国における分譲マンションの建築費水準を見てみると、2011年の59.8（万円/坪）から2012年の59.0（万円/坪）まで若干下落した後、2017年の85.5（万円/坪）まで継続的に上昇傾向で推移していることが読み取れます。また、2018年には82.9（万円/坪）と下落しましたが、2019年に83.6（万円/坪）の水準に回復してから2021年の88.9（万円/坪）まで3年連続で上昇しています。なお、底であった2012年から2021年までの9年間で約50.6%と5割以上も上昇していることが分かります。（下図参照）
2021年の東京における坪単価の水準は101.7（万円/坪）と前年から下落に転じる
続いて、東京における分譲マンションで建築費の傾向を見てみると、2011年の70.1（万円/坪）から2012年まで横ばいで推移した後、2015年の98.1（万円/坪）まで大きく上昇していることが分かります。また、2016年には96.3（万円/坪）の水準まで下落したものの、2017年には107.9（万円/坪）の水準まで再び大きく上昇しました。2018年に100.7（万円/坪）まで下落してからは、2019年の100.8（万円/坪）、2020年の104.9（万円/坪）と上昇傾向にありましたが、2021年は101.7（万円/坪）の水準まで下落しています。なお、底であった2012年の水準から2021年までに9年間で約45.0%と上昇していることが読み取れます。（下図参照）
2021年の大阪における坪単価の水準は85.6（万円/坪）と、この9年間で6割超の上昇へ
大阪における分譲マンションの建築費水準を見てみると、2011年の53.5（万円/坪）から2012年の52.3（万円/坪）まで下落しましたが、その後は2021年まで継続的に上昇して推移していることが読み取れます。2021年における建築費の水準は85.6（万円/坪）と、2012年の水準と比較すると約63.6%高い水準にあり、この9年間の上昇率が6割以上も上昇していることが分かります。（下図参照）
4. 賃貸マンションの建築費水準は？
都道府県別でみた賃貸マンションの坪単価、最も高い水準は高知、次いで東京が高水準に
賃貸マンションの2020年における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは高知の114.3（万円/坪）で、東京の112.7（万円/坪）、さらには群馬の111.6（万円/坪）、石川の111.5（万円/坪）が続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは大分の49.2（万円/坪）で、山形の54.3（万円/坪）、北海道の54.6（万円/坪）、青森の58.5（万円/坪）と続いています。（下図参照）
賃貸マンションの特徴としては、高知、東京、群馬、石川、神奈川における建築費が坪あたりで100万円以上の水準と、他の地域と比較して非常に高い水準にある点、また分譲マンションの場合と同様に建築費の水準で地域格差が大きい点が挙げられます。
5. 賃貸マンションにおける建築費の傾向は？
2021年の全国における坪単価の水準は83.8（万円/坪）と4年連続の上昇に
2011年から2021年まで全国における賃貸マンションの建築費水準を見てみると、2011年の57.8（万円/坪）から2016年の72.2（万円/坪）まで継続的な上昇傾向にあることが読み取れます。2017年の時点では71.8（万円/坪）と2016年からはやや下落に転じていますが、2018年の74.8（万円/坪）から2021年の83.8（万円/坪）まで4年連続で上昇しました。なお、2011年から2021年までの10年間で約44.9%と大きく上昇していることが分かります。（下図参照）
2021年の東京における坪単価の水準は112.7（万円/坪）と9年連続の上昇へ
東京における賃貸マンションの建築費水準を見てみると、底となった2012年の72.2（万円/坪）から2021年の112.7（万円/坪）まで継続的な上昇傾向で推移していることが分かります。建築費の水準はこの9年間で大きく上昇し、2012年からの上昇率は約56.0%となっています。（下図参照）
2021年の大阪における坪単価の水準は77.3（万円/坪）と前年から上昇へ
大阪における賃貸マンションの建築費水準を見てみると、2011年の57.8（万円/坪）から2012年の56.9（万円/坪）まで下落した後、2017年の72.9（万円/坪）まで継続的に上昇していることが分かります。その後、2018年に72.6（万円/坪）と若干下落も、2019年は74.4（万円/坪）まで上昇しました。そして、2020年は72.4（万円/坪）と下落へ転じましたが、2021年は77.3（万円/坪）の水準まで再び上昇しています。なお、底であった2012年から2021年までの9年間で約35.8%上昇していることが分かります。（下図参照）
以上のように、今回は建物用途がマンションの場合における建築費の水準や傾向について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や地域別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む目的には適っている一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
【最新レポート】
建築費が超高騰時代へ突入すると見込まれる具体的な理由について分かりやすく解説
実務で役立つ建築費の相場【最新版】へ
実務で役立つゼネコンの状況把握【最新版】へ
業績から把握するデベロッパーランキング【最新版】へ
職選びで役に立つ建設業の年収相場【最新版】へ
購入の検討に役立つ住宅価格の相場【最新版】へ
実務で役立つ建築費の相場【過去データ】TOPへ
参考｜主要データ一覧
マンションの建築費水準｜鉄筋コンクリート造
| 都道府県 | 坪単価（分譲マンション） | 坪単価（賃貸マンション） |
|---|---|---|
| 東京都 | 117.6（万円/坪） | 112.7（万円/坪） |
| 群馬県 | 101.7（万円/坪） | 111.6（万円/坪） |
| 宮城県 | 101.3（万円/坪） | 82.8（万円/坪） |
| 神奈川県 | 97.3（万円/坪） | 102.4（万円/坪） |
| 新潟県 | 94.7（万円/坪） | 79.5（万円/坪） |
| 愛知県 | 90.8（万円/坪） | 78.7（万円/坪） |
| 富山県 | 90.8（万円/坪） | 67.6（万円/坪） |
| 千葉県 | 89.7（万円/坪） | 87.3（万円/坪） |
| 滋賀県 | 89.4（万円/坪） | 82.7（万円/坪） |
| 大阪府 | 88.7（万円/坪） | 77.3（万円/坪） |
| 埼玉県 | 88.6（万円/坪） | 89.8（万円/坪） |
| 長野県 | 87.0（万円/坪） | 59.4（万円/坪） |
| 北海道 | 86.0（万円/坪） | 54.6（万円/坪） |
| 山梨県 | 85.6（万円/坪） | 96.8（万円/坪） |
| 青森県 | 84.5（万円/坪） | 58.5（万円/坪） |
| 栃木県 | 83.9（万円/坪） | 73.1（万円/坪） |
| 兵庫県 | 83.9（万円/坪） | 77.4（万円/坪） |
| 静岡県 | 83.6（万円/坪） | 74.0（万円/坪） |
| 茨城県 | 83.1（万円/坪） | 81.2（万円/坪） |
| 鹿児島県 | 83.0（万円/坪） | 69.7（万円/坪） |
| 愛媛県 | 82.4（万円/坪） | 72.8（万円/坪） |
| 三重県 | 81.4（万円/坪） | 71.8（万円/坪） |
| 岩手県 | 80.9（万円/坪） | 96.6（万円/坪） |
| 岐阜県 | 79.3（万円/坪） | 65.2（万円/坪） |
| 奈良県 | 78.0（万円/坪） | 72.2（万円/坪） |
| 京都府 | 77.8（万円/坪） | 73.7（万円/坪） |
| 長崎県 | 77.2（万円/坪） | 84.0（万円/坪） |
| 広島県 | 76.4（万円/坪） | 84.6（万円/坪） |
| 岡山県 | 75.8（万円/坪） | 78.8（万円/坪） |
| 沖縄県 | 75.3（万円/坪） | 73.1（万円/坪） |
| 宮崎県 | 72.9（万円/坪） | 67.1（万円/坪） |
| 福島県 | 72.9（万円/坪） | 95.3（万円/坪） |
| 福岡県 | 71.0（万円/坪） | 67.0（万円/坪） |
| 大分県 | 69.2（万円/坪） | 49.2（万円/坪） |
| 山口県 | 68.1（万円/坪） | 62.7（万円/坪） |
| 香川県 | 68.0（万円/坪） | 88.6（万円/坪） |
| 鳥取県 | 63.7（万円/坪） | 87.1（万円/坪） |
| 和歌山県 | 62.9（万円/坪） | 70.8（万円/坪） |
| 島根県 | 51.4（万円/坪） | 66.3（万円/坪） |
| 佐賀県 | 49.2（万円/坪） | 63.3（万円/坪） |
| 熊本県 | 45.3（万円/坪） | 66.2（万円/坪） |
| 福島県 | - | 95.3（万円/坪） |
| 富山県 | - | 67.6（万円/坪） |
| 福井県 | - | 60.6（万円/坪） |
| 山梨県 | - | 96.8（万円/坪） |
| 和歌山県 | - | 70.8（万円/坪） |
| 徳島県 | - | 64.2（万円/坪） |
| 全国平均 | 88.9（万円/坪） | 83.8（万円/坪） |
※1 建築費（万円/坪）は工事費予定額（円）を床面積（坪）で除した値
※2 工事費予定額に消費税は含まれない
注）坪単価を算出する際に対象としたデータについて、戸数が10戸未満の場合は、ばらつきを考慮して対象外とした。
「坪単価で把握する建築費」はこちらから↓
・戸建て住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・シェアハウスの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・マンションの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・事務所の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・工場の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・倉庫の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・商業店舗の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・病院の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・福祉介護施設の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・学校の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・全国の用途・構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か？
「坪単価で把握する住宅価格の相場」はこちらから↓
・住宅価格の相場は購入価格や坪単価でどの程度の水準か?
・東京の住宅価格はどの程度の水準か？
・神奈川の住宅価格はどの程度の水準か？
・千葉の住宅価格はどの程度の水準か？
・埼玉の住宅価格はどの程度の水準か？
・大阪の住宅価格はどの程度の水準か？
・福岡の住宅価格はどの程度の水準か？
・北海道の住宅価格はどの程度の水準か？
・沖縄の住宅価格はどの程度の水準か？
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－需要編」はこちらから↓
（１）主力とするターゲットや商品開発を建設需要から導こう！
（２）知りたい情報に辿り着ける３つのアプローチ！
（３）簡単に無料で手に入る「統計データ」を積極的に活用しよう！
（４）需要の傾向を読み解いて市場の先行きを考えよう！
（５）「影響要因」を把握して説得力のある需要予測を導き出そう！
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－供給編」はこちらから↓
（１）色々な視点から「建設業者の忙しさ」を把握しよう！
（２）「建設業者の忙しさ」を把握する具体的なアプローチとは！
（３）「建設業者の忙しさ」は業者の規模別に把握しよう！
（４）建設業者の供給状況を見抜いて実プロジェクトに応用しよう！
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－価格編」はこちらから↓
（１）「建築費」とは！？と聞かれたら！
（２）「建築費」ってどうやって算出されるの！？
（３）実務で使われる「概算」の方法とは！？
（４）「建築費」に影響を与える要因とは！？
（５）「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチとは！？
「関連記事-面白いほどよくわかる建設市場－建設市場予測編」はこちらから↓
（１）「建設市場」は「予想」でなく「予測」しよう！
（２）建築費が高騰/下落する仕組みとは！？
（３）建築費がいつ頃下落するか予測しよう！
「関連記事-海外建設市場シリーズ」はこちらから↓
（１）世界62か国で建設費が最も高い水準なのは！？
（２）世界の建設市場における労務費を比べてみる！
（３）世界における建設市場規模はどの程度か！？
「関連記事-建設統計からみた建設市場シリーズ」はこちらから↓
（１）2016年の「建築需要」と「建築費」の水準は！？
（２）建設市場における「受注高」「施工高」「未消化工事高」の水準は！？
