住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？【2022年版】
【坪単価で把握する住宅の建築費2022年版】
国内に建設される建物の建築費を坪単価から把握する「坪単価で把握する建築費特集」、今回は建物用途が住宅の場合として、2021年の国内における建築費の水準について坪単価をベースに紹介していきたいと思います。
構造別でみた住宅の坪単価は木造で坪あたり56.9万円の水準に
まず、2021年の全国における住宅の建築費を構造別でみてみると、坪単価が最も高い水準となったのは鉄骨鉄筋コンクリート造の場合で87.9（万円/坪）でした。次いで鉄筋コンクリート造、鉄骨造がそれぞれ87.5（万円/坪）、84.1（万円/坪）の水準になりました。一方、木造の場合は、坪単価が56.9（万円/坪）とここで取り上げた4種類の構造において最も低い水準となっています。（下図参照）
また、上図において、全構造平均の坪単価は65.3（万円/坪）と木造と鉄骨造の水準の間に位置していますが、これは、国内における住宅建築の約70%が木造として建設されていることに影響を受けている為と考えられます。（下図参照）
都道府県別でみた住宅の坪単価は？
木造住宅の建築費が最も高い水準は長野、北海道、山梨が続いて高水準に
木造住宅の建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準となったのは長野で62.5（万円/坪）でした。そして、北海道、山梨、香川がそれぞれ61.5（万円/坪）、61.5（万円/坪）、61.3（万円/坪）と続いています。また、東京における坪単価の水準は57.2（万円/坪）でした。（下図参照）
一方、木造住宅で坪単価が最も低い水準であったのは大阪の52.8（万円/坪）、次いで埼玉の53.6（万円/坪）、佐賀の53.9（万円/坪）、宮崎の54.2（万円/坪）となっています。なお、木造住宅の建築費水準は都道府県別に見た場合、概ね52.8（万円/坪）から62.5（万円/坪）までの10万円の範囲に収まっていることも特徴として挙げられます。
鉄筋コンクリート造住宅の坪単価は東京と長野で高い水準に
2021年の鉄筋コンクリート造住宅における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準は東京の107.0（万円/坪）、次いで長野、高知、神奈川、山梨がそれぞれ100.5（万円/坪）、97.5（万円/坪）、96.6（万円/坪）、95.2（万円/坪）の水準となっています。東京と長野を除く地域における坪単価が100.0（万円/坪）未満であることを踏まえると、東京と長野における水準が突出して高いことが分かります。
一方、坪単価が最も低い水準となったのは島根の50.9（万円/坪）で、岩手の56.3（万円/坪）、大分の57.2（万円/坪）、山口の64.0（万円/坪）が続いています。このように、鉄筋コンクリート造の場合における住宅の建築費水準は、木造の場合と異なり、都道府県の間で乖離が大きいことが読み取れます。（下図参照）
鉄骨造住宅の建築費は東京と神奈川で高水準に
2021年の鉄骨造住宅における建築費の水準を都道府県別に見てみると、最も高い水準になったのは東京の100.7（万円/坪）で、神奈川の92.9（万円/坪）、京都の89.1（万円/坪）、沖縄の87.9（万円/坪）がこれに続きました。一方、坪単価が最も低い水準となったのは山形の51.8（万円/坪）、次いで宮崎の65.5（万円/坪）、香川の68.6（万円/坪）、佐賀の70.0（万円/坪）となっています。（下図参照）
東京や全国における住宅建築費の傾向は？
木造住宅の建築費は東京で下落も全国で僅かながら上昇へ
2011年から2021年までの東京における木造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2013年の57.2（万円/坪）から2019年の58.5（万円/坪）まで概ね横ばいの上昇傾向にあります。しかしながら、2020年は58.3（万円/坪）、2021年は57.2（万円/坪）と若干であるものの、2年連続の下落となりました。ただ、東京における木造住宅の建築費水準は、2011年から2021年まで大きく変動することなく、概ね坪あたり57万円から58万円前後の水準で、横ばい推移していることが読み取れます（下図参照）
一方、全国における木造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の52.2（万円/坪）から2021年の56.9（万円/坪）まで年々右肩上がりで推移しており、この10年間に建築費は坪あたりでは約4.7万円高い水準へ、上昇率でみると約9.0%上昇しています。（下図参照）
鉄筋コンクリート造住宅の建築費は東京で下落へ転じるも全国では上昇継続に
次に、2011年から2021年までの東京における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、底となった2011年の71.6（万円/坪）から2017年の106.7（万円/坪）へ約49%と大きく上昇しました。その後、2018年に102.4（万円/坪）の水準へ若干下落しました。そこから、2020年の107.3（万円/坪）まで3年連続の上昇傾向で推移していましたが、2021年は107.0（万円/坪）と若干ながら下落に転じていることが分かります。（下図参照）
続いて、全国における鉄筋コンクリート造住宅の建築費水準を見てみると、2012年の59.7（万円/坪）から2017年の80.6（万円/坪）まで約35%と大きく上昇しています。その後、2018年に80.2（万円/坪）と僅かに下落したものの、2019年の82.4（万円/坪）、2020年の86.0（万円/坪）、2021年の87.5（万円/坪）と、3年連続の上昇傾向にあることが読み取れます。（下図参照）
鉄骨造住宅の建築費は東京と全国で共に上昇傾向が継続
木造住宅や鉄筋コンクリート造住宅と同様に、東京における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、2011年の76.6（万円/坪）から右肩上がりの上昇傾向で推移し、2021年の時点で100.7（万円/坪）と10年間で約31.5%上昇していることが分かります。（下図参照）
また、全国における鉄骨造住宅の建築費水準を見てみると、東京の場合と同様に2011年の65.1（万円/坪）を底として2021年の84.1（万円/坪）まで継続的に上昇し、この10年間で約29.1%上昇していることが分かります。（下図参照）
このように、住宅における建築費水準の傾向は、木造では大きく変動していない一方、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の場合では変動が大きいことが読み取れます。
以上のように、今回は「坪単価で把握する建築費」シリーズとして、建物用途が住宅の場合における建築費の水準について坪単価をベースに紹介しました。
また、今回のコラムで紹介しました統計データを活用して建築費の水準を把握する方法は、全国や都市別といった大きな市場における「建築費」について、その水準やトレンドを掴む方法としては適している一方、個別性の強いプロジェクトや高い精度を求める場合にはあまり向いていない方法であることについても触れておきます。
その為、こちらの「建築費」の水準や傾向を把握するアプローチに関するコラムを参考に、目的に適ったアプローチで「建築費」の水準や傾向を把握することが重要となります。
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参考｜主要データ一覧
住宅の建築費水準｜木造
| 長野県 | 62.5（万円/坪） |
| 北海道 | 61.5（万円/坪） |
| 山梨県 | 61.5（万円/坪） |
| 香川県 | 61.3（万円/坪） |
| 高知県 | 60.9（万円/坪） |
| 岡山県 | 60.7（万円/坪） |
| 新潟県 | 60.7（万円/坪） |
| 三重県 | 60.7（万円/坪） |
| 富山県 | 60.5（万円/坪） |
| 岩手県 | 60.0（万円/坪） |
| 沖縄県 | 59.8（万円/坪） |
| 鳥取県 | 59.8（万円/坪） |
| 島根県 | 59.6（万円/坪） |
| 石川県 | 59.6（万円/坪） |
| 山形県 | 59.2（万円/坪） |
| 静岡県 | 59.2（万円/坪） |
| 山口県 | 58.6（万円/坪） |
| 福島県 | 58.5（万円/坪） |
| 熊本県 | 58.5（万円/坪） |
| 京都府 | 58.4（万円/坪） |
| 長崎県 | 58.1（万円/坪） |
| 徳島県 | 57.9（万円/坪） |
| 福井県 | 57.8（万円/坪） |
| 青森県 | 57.7（万円/坪） |
| 秋田県 | 57.4（万円/坪） |
| 東京都 | 57.2（万円/坪） |
| 岐阜県 | 57.2（万円/坪） |
| 鹿児島県 | 57.0（万円/坪） |
| 愛知県 | 56.7（万円/坪） |
| 愛媛県 | 56.5（万円/坪） |
| 広島県 | 56.4（万円/坪） |
| 茨城県 | 56.3（万円/坪） |
| 栃木県 | 56.2（万円/坪） |
| 群馬県 | 55.9（万円/坪） |
| 大分県 | 55.8（万円/坪） |
| 宮城県 | 55.7（万円/坪） |
| 千葉県 | 55.7（万円/坪） |
| 奈良県 | 55.5（万円/坪） |
| 兵庫県 | 55.5（万円/坪） |
| 滋賀県 | 55.4（万円/坪） |
| 神奈川県 | 55.2（万円/坪） |
| 福岡県 | 55.2（万円/坪） |
| 和歌山県 | 54.4（万円/坪） |
| 宮崎県 | 54.2（万円/坪） |
| 佐賀県 | 53.9（万円/坪） |
| 埼玉県 | 53.6（万円/坪） |
| 大阪府 | 52.8（万円/坪） |
| 全国平均 | 56.9（万円/坪） |
※1 建築費（万円/坪）は工事費予定額（円）を床面積（坪）で除した値
※2 工事費予定額に消費税は含まれない
注）坪単価を算出する際に対象としたデータについて、建物数が10棟未満の場合は、ばらつきを考慮して対象外とした。
「坪単価で把握する住宅価格の相場」はこちらから↓
・住宅価格の相場は購入価格や坪単価でどの程度の水準か?
・東京の住宅価格はどの程度の水準か？
・神奈川の住宅価格はどの程度の水準か？
・千葉の住宅価格はどの程度の水準か？
・埼玉の住宅価格はどの程度の水準か？
・大阪の住宅価格はどの程度の水準か？
・福岡の住宅価格はどの程度の水準か？
・北海道の住宅価格はどの程度の水準か？
・沖縄の住宅価格はどの程度の水準か？
「坪単価で把握する建築費」はこちらから↓
・戸建て住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・賃貸アパートの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・シェアハウスの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・マンションの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・住宅の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・事務所の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・工場の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・倉庫の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・商業店舗の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・ホテルの建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・病院の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・福祉介護施設の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・学校の建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か？
・全国の用途・構造別でみた建築費は坪単価でどの程度の水準か？
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